こんな方に遺言作成をおすすめします
誰もが願う,他人に迷惑をかけず,自分に責任をもって,自分らしく生きること。この最後の締めくくりが遺言です。 自分の亡き後における親族間の骨肉の争いを防ぎたい,大事な人を守ってやりたい,後継者に事業を上手に引継ぎたい,世話になった者にそれなりのことをしてあげたい,相続の手続きを簡略にしてやりたいなど様々な想いを叶える手段に遺言があります。
遺言をすることは,今に生きる人の務めであり,最後の責任でもあります。そこで,相続争いを未然に防止する事を中心に,相続の基本,より良い遺言の作り方等について,分かりやすく説明します。
遺言作成のメリット 遺産分割協議をスムーズに進められる
遺言がない場合、原則として亡くなった方の相続人が遺産相続に関して協議を行い、協議が整えば遺産分割が行われるのですが遺産分割協議で一番大変なことは、相続人全員の足並みを揃えることです。
一人でも不同意な者がいれば、骨肉の争いとなり、いわゆる遺産相続争いにつながりかねません。遺産相続で、争いになってしまう多くのケースが、「私と私の子どもには、遺言書なんて必要ない」と安易に考えて、遺言書を残さなかった方の場合に多いのが、残念ながら実情です。
自分の死後、残される財産に関して相続人にどのように遺産分けをして欲しいかを明確に書きとめておけば、こうした遺産相続争いを防ぐことができます。 相続争いは、自分の子供以外にも、子供の配偶者やその両親、または相続人となった自分の兄弟やその関係者など、様々な人間関係が絡んできてしまうのが、その複雑たるゆえんです。
ですから、遺言書は、親族間の全員の平穏を導く保険とも言えると思います。
子供のいない夫婦の方
夫婦の一方が死亡した場合、残された配偶者と被相続人(亡くなった方)の兄弟姉妹(被相続人の親が生きていれば親)が相続人となります。配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1という法定相続分です。夫婦で築いた資産を資産形成には関係ない兄弟にも配分しなければならないことになります。
また、兄弟のうち死亡している者がいれば甥や姪が代襲相続人となり、遺産分割する際には、手間がかかる事態ともなります。前もって遺言を書いておけば、全て配偶者に相続させることができ、兄弟姉妹等の協力も必要ありません。
また、夫婦別々に相互遺言を作るべきでしょう。妻の方が長生きするとは限りません。
相続争いが予想される場合
うちのところは大丈夫だと安心していても,いざ相続が始まればこれまでの相続人の態度ががらっと変って骨肉の争いになることもあります。 前もって遺言を書いておけば,このような醜い争いやトラブルを未然に防ぐ事ができます。争いとまでいかなくても、遺言がないために、いやな思いをするとこになったりします。
自分の思う通りに(遺留分に反しない範囲で)自分の財産を相続人に相続させたいと思う方
法定相続人以外の人に、財産をあげたい方
内縁の夫、内縁の妻(内縁関係の方は法定相続人ではありません)がいる場合に、内縁の夫、内縁の妻に財産をあげたい場合や いつも世話をしてくれた人に、財産をあげたい場合。自分の子供の奥さんが、良く世話をしてくれたので、子供の奥さんにも財産をあげたい場合などや市町村や各種団体,公益法人に遺言で寄附をしたい場合など。
事業や商売を特定の相続人(事業後継者)に継がせたい方
事業や商売を分散させずに後継者の相続人に継がせる場合,遺言で行う方がスムースになります。事業主やオーナー社長が 事業承継をお考えならば,事業承継のページも参考にしてください。
法定相続人が、誰もいない方
甥姪まで相続人をたどって、該当者が誰もいない場合は、相続人不存在となり、最終的に遺産は国庫へ帰属することになりますのであらかじめ遺言することをお薦めします
遺言の種類とそれぞれのメリットデメリット
遺言には自筆証書遺言(全ての文面を自筆で作成する遺言),公正証書遺言(公証役場で公証人に認証してもらう遺言),秘密証書遺言(遺言の内容を秘密にしておきたい場合に作成)の3種類あります。
公正証書遺言とは証人2人以上の立会いのもとで、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者および証人に読み聞かせ、筆記の正確なことを承認したのち、各自これに署名押印する。そして、公証人が、その証書が、法律で定められた方式に従って作成したものである旨を付記して、署名押印された遺言です。
自筆証書遺言はほとんど費用もかからず簡単に作成出来るのはメリットですがが,紛失や変造の危険性もあります。さらには,家庭裁判所の検認が必要となるために預貯金の引き出しがストップしてしまうところが大きなデメリットになります。
特に検認で無効な遺言とされると遺産分割で思わぬトラブルにもなりますので作成の際には要件や方式を満たす為に慎重な作成が必要となります。
公正証書遺言は公証役場にまで出向く必要があり,認証料などの手数料も掛かるのがデメリットですが,遺言の原本が公証役場に保管される為に偽造変造の危険性はほとんどありませんし家庭裁判所の検認も不要になりますので預貯金の引き出しやその後の遺産分割もスムースになります。
写しを紛失しても再発行されます。また証人も必要になりますが守秘義務が課されているため内容が漏れる恐れはありません。当事務所では紛争を防ぎ、安全にそして確実に遺産の引継ぎが出来る方法として公正証書遺言をお薦めしています。
公正証書遺言作成のための準備について
遺言の内容を簡単に記載したメモ
資料として、下記のもの
- 遺言者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本・除籍謄本など
- 相続人以外の人に財産を遺贈する場合には、その人の住民票など
- 相続させる財産が不動産の場合には、土地・建物の登記簿謄本および固定資産税評価証明書
- 不動産以外の財産の場合は、預金通帳、株券など
当事務所では遺言者の気持ちに十分配慮しつつ,死後争いが起こらぬような遺言の草案をお作りしております
公正証書による遺言に必要な書類
- 遺言者本人の印鑑証明書 1通(市役所で取得 発行後3ヶ月以内のもの)
- 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本 1通
- 遺産相続予定者の住民票 1通 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
- 遺産に不動産が含まれる場合には、土地,建物ごとの登記簿謄本及び固定資産の評価証明など(固定資産の通知書でも可)
- 預貯金を相続させる場合には,銀行名,支店名,郵便局名,種類(定期,普通など),口座番号,名義人のメモ
- 遺言執行者を決める場合はそのものの住民票の写し
当日持参するもの
- 遺言者本人の実印(印鑑登録証明書と同じもの)
- 証書作成に必要な手数料
体が不自由で、公証役場にいけない場合
公証人に事情を説明すれば、自宅などに来てくれます。
公正証書遺言と自筆遺言のメリットデメリットのまとめ
公正証書遺言 | 自筆証書遺言 | |
---|---|---|
概要 |
公証役場で2人以上の証人の 立会いのもとに、 遺言の内容を公証人に口授し、 公証人が遺言書を作成する。 療養中の方、文字を書けない方等 でも遺言をすることができる。 |
遺言の全文と日付、氏名をすべて自書し、 押印する。 家庭裁判所の検認(けんにん)が必要。 |
長所 | 公証人が作成するので方式の 無効になるおそれがない。 偽造、変造、紛失の危険性がない。 |
誰にも知られずに作成できる。 自分一人で作れるので 簡単で費用がかからない。 作成替えが容易。 |
短所 | 遺言の内容が他人(証人等) に知られてしまう。 証人が必要。公正証書作成費用がかかる。 |
形式の不備や内容が不明確になりがちで、 後日相続人の間でトラブルが起きやすい。 偽造、変造、隠匿のおそれがある。 遺言が無効になるおそれがある。 |
公正証書遺言を作成する場合の手数料
(目的財産の価額) | (手数料の額) |
---|---|
100万円まで | 5000円 |
200万円まで | 7000円 |
500万円まで | 11000円 |
1000万円まで | 17000円 |
3000万円まで | 23000円 |
5000万円まで | 29000円 |
1億円を超える部分については
1億円を超え3億円まで 5000万円毎に 1万3000円
3億円を超え10億円まで5000万円毎に 1万1000円
10億円を超える部分 5000万円毎に 8000円がそれぞれ加算されます
病院や自宅に公証人に出張してもらう場合には、1日あたりの日当が加算され、作成手数料も5割増しとなります。
公証役場の場所
- 神戸 神戸市中央区江戸町95井門神戸ビル8階
- 伊丹 伊丹市伊丹1-6-2丹兵ビル2階
- 尼崎合同 尼崎市昭和通7-234りそな銀行ビル2・4階
- 明石 明石市本町1-1-32明石商工会館ビル3階
- 姫路東 姫路市北条宮の町385番地永井ビル3階
- 姫路西 姫路市北条口2-18宮本ビル2階
- 豊岡 豊岡市寿町11-2第2千代田ビル305
- 龍野 たつの市龍野町富永300-13中岡ビル2階
- 加古川 加古川市加古川町北在家2006永田ビル2階
遺言作成のための準備
まずは正確な財産の把握から。預貯金,国債,株式,不動産は名寄帳(土地・家屋の物件一覧)などにより財産目録を作成する。 不動産は登記証明書通りの地番であることを確認する。 いざという時のためにあるいは現状の財産把握のために生前に財産目録を作っておくことをお薦めします。
遺産は、大きく分類すると以下のようなもので構成されます
- 現金、不動産、動産、債権、株(プラス財産)
- 借金、保証債務、買掛金、預品返還義務(マイナス財産)
自筆証書遺言で注意すべきこと
自筆証書遺言はちょっとしたミスで無効になります。作成の際には専門家の助言をお進めします。
- 作成日付を平成○○年○月吉日とすると日付が特定されないという理由で無効になりますので年月日まできちんと正確に記載しておく必要があります。
- 「全文が自署により書かれている」こと「日付と氏名の記載」「印鑑」が必要とされ(民法968条)この内一つでも不備があれば遺言書は無効となってしまいます
- 変更の旨の署名を伴う付記が必要になります
- 遺言内容が矛盾している事
- 押印が必要であり、一部の加除変更には変更箇所の特定・押印 本人の同一性を確認するための要件です。実印でも認印でもよい。
- 相続人の権利を奪う遺留分侵害を内容にしたもの
- 公序良俗に反するような内容は無効となります
- 誰に何を(どの財産を)相続させるかが不明瞭な場合
- 夫婦連名の署名は無効となります。かならず単独の署名にしてください
- ビデオテープなどの録画,録音は遺言と扱われません
- 遺留分を無視した内容
その他自筆証書遺言で注意すべき事項
1.遺言書の用紙
保存に耐えうる用紙を使用することが望ましいといえます。和紙・洋紙のどちらでもかまいませんが、ノートの切れ端などに遺言をされることはあまり望ましくありません。遺言は遺言を作成される人の重要な意思を書き表したものであることから、ぞんざいに扱ったように思われるからです。
2.筆記用具
ペン・ボールペン・筆などを使用することが必要です。鉛筆で作成された遺言書は簡単に第三者が勝手に変更したりすることができ、遺言者の真意が曲げられるおそれがあるため原則有効ではありません。 タイプライターやワープロなど機械を用いて作られた遺言は無効です。また、本人の筆跡が確認できなければならないから、他人によって代筆された遺言も無効です。
このように自筆証書遺言は不備が認められると法的に無効になるため,作成の際には専門家にご相談されることをおすすめします。
遺言をみつけたときは、どうするのか
遺言を見つけても、すぐに開けてはいけません 公正証書遺言以外の遺言(秘密証書遺言、自筆証書遺言)は、家庭裁判所で検認をしなければなりません。 また、公正証書遺言以外の封印してある遺言書(秘密証書遺言、自筆証書遺言)は、家庭裁判所で開封しなければなりません。
相続人全員の合意があれば、必ずしも遺言による指定相続分や法定相続分によることはありません。
遺言が二つ見つかった場合
新しい遺言が優先です 遺言は、新しい遺言が優先されます。 二つの遺言で、日付けの新しい遺言が優先されることになります。