離婚しても支払われなくなる養育費
養育費とは一般的にいえば、未成熟子が自立するまでに要するすべての費用ということになります。衣食住に必要な経費、教育費、医療費、最小限度の文化費、娯楽費、交通費等です。 協議、調停、裁判という離婚の形態にかかわらず、養育費というのは必ず取り決められるものです。また、離婚後でも養育費の分担について話し合うことは可能です。
親は子どもの養育に責任があり、離婚しても当然「養育費」を支払う義務があります。しかし統計によれば離婚後養育費を受けているのは全母子家庭の二割に満たないようです。
離婚の際に養育費の取り決めをしても,その後支払われないケースが頻発しています。
協議離婚(当事者の話し合いでの離婚)の場合、まず内容証明郵便で離婚協議書の取り決め通りきちんと支払うよう請求をするか、内容証明郵便ではじめて養育費を請求することになるでしょう。この内容証明郵便でも養育費を支払ってくれない場合は、養育費の支払を求め養育費請求調停を裁判所に申立て、それでもまとまらなければ裁判で確定判決を取りましょう。
離婚後の養育費の履行
調停離婚(調停で離婚をすること)、審判離婚(裁判で離婚すること)をしている場合、家庭裁判所に履行勧告の申立てをすることにより、家庭裁判所から養育費を支払うよう勧告してもらう方法があります。この履行勧告には強制力がありませんが、相手に対して心理的圧力を与える効果が期待できます。
それでも効果がなければ調停調書や審判書を債務名義として強制執行の申立て、財産や給料を差押えましょう(通常は給料手取額の4分の1が上限ですが、養育費の場合は2分の1が条件です)。
離婚後のこのような事態に備えて,離婚の際にあらかじめ公正証書で養育費を決めておけば,強制執行で口座の差押えなどが可能になります。また協議離婚であっても 将来のリスクに備えて公正証書の作成をおすすめします。また公正証書の作成に関しては離婚の条件を詳細に検討する必要がありますので専門家に依頼した方が,後悔することがないでしょう。
離婚に際して公正証書を作成することのメリット
協議離婚(当事者の話合いで離婚すること)は、簡単な手続きで離婚が成立するため、離婚届を提出する前に、離婚後にトラブルにならないよう、十分に話し合いを行うことが必要です。 離婚という大きな問題を当事者間同士で話し合うことは精神的にも大変つらいものですが、なるべく納得のいく形で離婚できるよう、辛抱して話し合いを行いましょう。 一時的な感情や成り行きで、安易に結論を出してはいけません。
金銭に関することは、離婚後にトラブルになりやすい問題です
協議離婚の場合、離婚届には、子供の親権者以外、慰謝料や財産分与等の金銭面での約束事の記載はありません。 金銭の支払額や支払方法などで、「言った」、「言わない」の争いを避けるためにも話し合いで決めた内容を必ず文書にして残しておきましょう。
公正証書は、公証人が当事者の意思を確認し、法律に則して作成する公文書であり、作成された文書は公証役場に保存されます。 よって、その公正証書にある契約内容が適正に成立し、その後の改ざんの可能性も考えにくいことからも、客観的にみて書面としての信頼性は高く、私製文書(当事者のみで合意した文書)に比べると、高い証明力があると言ってもよいかと思います。
こういう性質からも公正証書(執行証書)は、裁判所の確定判決や調停調書などと同様に、債務名義(債権の存在及びその範囲を明確にした公文書)としての効力が認められ、強制執行※などの際には必要な書面となります。なお、私製証書(私文書)の場合、強制執行の手続き上、まずこの債務名義(判決などのこと)をとるための作業が別途必要になります。
[※ 強制執行には、金銭の一定額の支払またはその他の代替物もしくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求を内容とし、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述の記載が必要です。]
やはり“強制執行”というものが頭の片隅にでもあれば、債務者(支払い等の義務がある者)としては決して軽い文書とは思えないので、心理的な圧迫として、少なからず効果は期待できます。 もちろん、「そんな約束(契約)知らない!忘れた!書面なんて失くした!」なんてことが通らないということを、本人は自覚されるので、履行を促す意味でも、権利者が安心を得る意味でも、離婚協議内容を公正証書にすることはとても有効だと思います。
専門家に依頼するメリット
公正証書の原案などは専門家に依頼すべきものと考えます。なぜなら一般の方が原案を作っても法的な穴があったり,将来のリスクを見落としだからです。ちょっとした工夫で将来のリスクを低減するためにも専門家に相談することをおすすめします。
養育費を決める際のポイント
子供がいくつになるまで、養育費を支払うのか
18歳まで または20歳まで または大学卒業までのいずれかが多いです
よく問題になるのが、大学進学の費用が養育費として請求できるか、ということです。裁判例は、大学教育をうけさせる資力がある父親への請求で争いになったケースで、その子どもに大学進学の能力がある限り、大学教育を受けさせるのが普通家庭における世間一般の通例であるとして養育費を認めています。
離婚後の養育費の支払い期限 支払い方法
相手がいいかげんな性格で資力にも問題があるような場合には、額が低くても一時金で受け取るほうが結果的には得ということもありえます。要するに支払方法と金額を総合的に判断して慎重に考える必要があるということです。
毎月○日までに、子供名義の金融機関の口座に支払うとするというのが一般的です
また住所変更、電話番号の変更の時は連絡することなどの文言も追加します
夫婦が別居している場合に、夫婦の一方が支払った養育費は離婚までは婚姻費用の一部ですので婚姻費用として過去の養育費を請求できます。離婚するときには財産分与に過去の婚姻費用の清算という要素も含まれていますので、財産分与に含めて請求することもできます。
離婚後の養育費の相場について
離婚した親は未成年の子供がいる場合、双方ともに子供を扶養する義務を負います。子供にかかる生活費、医療費、教育費、娯楽費のすべてをそれぞれの収入や生活水準に応じて分担します。通常は未成年の子が18歳または20歳になるまで支払義務を負います。
養育費を払わなければならない方の収入と,受け取る側の元配偶者の収入の割合でほぼ決まります。
参考リンク 東京・大阪の裁判官の共同研究の結果作成された「養育費算定表」養育費の増減
養育費を決めてそれを書面に残していた場合は、額を変更するのは難しくなります。 しかし、養育費は財産分与や慰謝料と違って、子供が進学したり、病気や事故にあい治療費がかかり取り決めた養育費以上にお金がかかるなどの事情があれば増額することもできます。 あらかじめそういうことを想定して、離婚協議書に「子供の進学や病気などの際には、養育費を増額することができる。」という項目を盛り込んでおけばより確実です。
養育費の請求をしないと約束した場合
妻が離婚したい一心で、「離婚さえしてくれれば、今後一切、養育費の請求はしません」と夫に約束してしまうことがよくあります。 法律上、子が親から扶養を受ける権利は放棄できないとされています。父母の約束は2人の間では効力があるものの、子は父母間の約束に縛られるわけではないからです。
離婚の際に養育費の請求をしないと約束していた場合でも、その後の経済状況により養育費が十分ではなくなった場合には、養育費の請求ができますが、無条件に認められるわけではありません。将来的にかかるであろう養育費については請求することは可能ですが、過去の養育費の分担を請求することは難しいでしょう。
再婚と養育費
離婚した元配偶者が再婚しても養育費の支払い又は受け取りには何の影響もありません。また相手方が自己破産しても免れる事はできません。
子どもの生活保持義務を負うのは再婚相手ではありません。しかし、子どもと再婚相手が養子縁組をするような場合には、養親にも法的に子どもの生活費を負担する義務が生じますので、養育費の減額が認められる場合があります。
養育費と口座
あらかじめお子さん名義の口座をご用意なさると良いでしょう
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